100年の
自分史
人生の軌跡を、文学の質で一冊の書籍に仕立てるサービス。読み手の多くは、人生の後半にいます。読みやすさを最優先に、それでも静けさを手放さない場所として設計しました。
読みやすさは、美意識の敵ではない。
「一生を、一冊に。」——語られないまま過ぎてゆく人生を、文学の質で一冊に仕立てる。安い買い物ではなく、決めるまでに時間のかかる買い物です。
この仕事が他の五つと違ったのは、画面を見つめる人が誰かという一点でした。読み手の多くは、人生の後半にいる方々。細い文字も、低いコントラストも、洒落ではなく単に読めない。けれど文字を大きくした瞬間に、たいていの画面は品を失います。小さく組むことで保たれていた静けさを、大きな文字のまま、どう保つか。それが、この場所に課された一点でした。
読みやすさと静けさは、どちらかを捨てる関係ではない。両立させるために下した判断を、一つずつ記録として残します。
-
最初の画面に、縦の一行だけ。
「一生を、一冊に。」——説明を置かない。縦に組んだ一行と、闇に積まれた書物だけを置く。何を売る場所かより先に、どういう格の場所かが伝わる。
-
文字を大きくし、余白も同じだけ広げる。
本文を大きく、行間を広く。詰まって見えないよう、周囲の余白を同じ比率で広げる。可読性のために品を落とさない——寸法を一段ずつ、すべて上げる。
-
説明の前に、無音の映像を一本置く。
声が原稿になり、一冊になるまでを、音のない短い映像にする。自動再生・消音——音を出せない場所でも同じように届く。言葉で説明するより早く、仕事の質が伝わる。
-
申し込みを、書類ではなく所作に。
入力欄を減らし、迷う場所をなくす。送られた内容はそのまま記録され、受付の返信が自動で届く。決心してから申し込みまでの間に、気持ちの冷める時間を作らない。
急かす設計より、
待つ設計。
一生に一度の買い物です。急かすほど、決心は遠のく。だからこの場所では、次のものを意図して手放しました。
残り時間のカウントダウン急かされて決めた一冊は、届いた日に色褪せる。せき立てるのではなく、決心を待つ設計にする。細く小さい欧文の見出し洒落て見える寸法が、読み手には読めない。読めない美しさは、この場所では美しさではない。お客様の声の量産数を並べるほど、一人の人生の重さが薄まる。証言の数ではなく、仕事そのもので語る。
開くと、深い闇のなかに書物が積まれ、縦に一行だけが立っている。スクロールすれば文字は大きく、行間は広く、それでも画面は静かなままです。急かす言葉はどこにもなく、最後まで読んだ人だけが、静かに申し込みへ辿り着きます。
読みやすさと静けさが、一つの画面で両立すること。それが、この仕事の達成でした。
※アクセス数や受注といった成果指標は、この欄には置きません。文字を大きくしても、品が一段も落ちなかったこと——その一点を、私たちはこの仕事の達成と考えています。