「ブランドコンセプトを作りたい」と相談を受けると、多くの場合、先に言葉を探し始めます。上質、やさしい、革新的、誠実。どれも間違いではありません。ただ、その言葉だけでは、Webのトップにどの写真を置くか、投稿の一行目をどう始めるか、価格をどこまで説明するかを決められません。コンセプトは、見栄えのよい説明文ではなく、迷った瞬間に選択をひとつへ寄せるための基準です。
美文より先に、判断基準をつくる
上質、洗練、親しみやすさ。これだけでは次の一枚も選べません。誰に何を約束するか、何をしないかまで決めて、初めて言葉は制作で働きます。
たとえば「忙しい経営者に、複雑な選択を静かに整理する」と決めたブランドなら、サイトで情報を詰め込みすぎません。写真も、賑やかな笑顔を並べるより、手元や空間に呼吸を残します。文章は煽らず、次に必要なことだけを差し出します。同じ“上質”という語でも、判断の結果がここまで変わるなら、先に決めるべきなのは形容詞ではなく約束です。
反対に、コンセプトが弱いまま制作を始めると、途中で好みの強い案が何度も入り込みます。ロゴは静かなのに、SNSだけが急に賑やかになる。サイトは余白を大切にしているのに、提案書では情報を急いで詰め込む。個々の出来が悪いわけではなくても、受け取る人は一つのブランドとして記憶できません。コンセプトは、センスの高い案を増やす道具ではなく、良いけれど違う案を見送るための道具です。
迷ったときに選べる言葉だけが、ブランドの軸になる。

