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デザインの修正費に、相場は立たない。止まる場所を先に書く

デザインの修正費に、相場は立たない。止まる場所を先に書く

デザインの修正費の相場を調べて、はっきりした数字が出てこなかった方へ。先に答えを書きます。修正費に相場が立たないのは、値段が隠されているからではなく、修正という作業の量が、頼む側と作る側の「どこで止めるか」の合意でしか決まらないからです。 回数を数えても、金額は決まりません。

一回いくら、と書ける仕事ではない。それでも見積書には金額を書かなければならない。この矛盾を、作る側がどう処理しているのか。今日はその内側を開けます。

デザイン修正費用の相場が、調べても出てこない理由

修正費が公開されにくいのは、同じ「修正一回」が、まったく違う作業を指すからです。

文字を一箇所直すのも一回。配色を全部変えるのも一回。前者は数分で終わり、後者は最初からやり直すのに近い。時間で二百倍ちがう作業に、同じ名前がついている。

修正一回、という単位は、作業量をひとつも説明していません。

だから相場表を作ろうとすると、必ず「内容によります」という但し書きに行き着く。書き手が不誠実なのではなく、書けないことを書けないと言っているだけです。

もうひとつ、公開されにくい理由があります。修正費は、多くの場合関係の値段になっているからです。気持ちよく進んだ仕事では請求されず、こじれた仕事では請求される。同じ作業量でも金額が変わる。これを表にすると嘘になるので、誰も表にしない。

デザイン修正回数を先に決めると、金額のほうが動かなくなる

そこで私がやっているのは、金額を先に決めることではなく、回数を先に書くことです。

見積書に「修正三回まで含む」と書く。四回目からは別途、と書く。これを書くと、面白いことが起きます。金額のほうが動かなくなる。

理由は単純で、回数に上限があると、こちらが一回目の精度を上げるしかなくなるからです。上限は頼む側を縛る道具に見えて、実際に先に縛られるのは作る側です。三回で終わる設計にしないと、自分の首が絞まる。だから最初の一案で決まるように、事前の確認が増える。

回数を書くのは、締めつけるためではなく、三回で足りるように設計するという宣言です。

そしてもうひとつ。回数が書いてあると、頼む側は一回を大事に使うようになる。思いついた順に小出しにするのをやめて、社内で先にまとめてから渡してくれる。これが実際にいちばん効きます。金額を下げているのは値引きではなく、この一手間です。

「デザイン修正地獄」は、回数の問題ではない

修正が終わらない仕事には、共通点があります。回数の多さではありません。

決裁者が二人以上いて、その二人が同席していない。

一人目の指示で直し、二人目の指示で戻す。同じ場所を往復するので、回数だけが増えて、成果物は最初の案に近づいていく。作る側から見ると、これは修正ではなく判断の代行です。本来は依頼側の中で終わるはずの議論を、こちらの画面の上でやっている。

もうひとつの共通点は、参照点が無いことです。「もう少し高級感を」と言われて三回直すのと、「この一枚に近づけて」と言われて一回で終わるのとでは、作業量が違うのではなく、判断の回数が違う。参照が一枚あるだけで、往復は目に見えて減ります。

だから、修正が増えそうな案件かどうかは、着手前にだいたい分かります。決裁者の人数と、参照点の有無。この二つだけで、ほぼ読めます。

三つ目の共通点を挙げるなら、戻す先が残っていないことです。三案から一案を選んだあと、選ばなかった二案を捨ててしまう。すると四回目の修正で「やっぱり最初のほうが」と言われたときに、戻る場所がありません。もう一度作り直すしかない。外したものは、消さずに残しておく。これだけで、終盤の作り直しがかなり減ります。

そしてもうひとつ、作る側にも言い分があります。直せば直すほど良くなる、という前提が間違っている場面があるということです。回数を重ねると、たいてい平均に近づきます。角が取れ、誰も反対しない形になり、最初にあった強さが消える。修正が十回を超えた仕事で、一回目より良くなったものを、私はまだ見たことがありません。止める場所を決めるというのは、予算を守るためだけの話ではなく、作ったものを守るための話でもあります。

修正が終わらないのは、直す力が足りないからではなく、決める場所が決まっていないからです。

相場の代わりに、見る三つ

相場の数字を探すより、これから頼む相手の見積書を、次の三点で見るほうが確実です。

一、回数が書いてあるか。 書いていなければ、悪意ではなく、そこまで想像していないことが多い。聞けばたいてい書き足してもらえます。書き足された瞬間に、その見積書は他社と比べられるものに変わります。

二、四回目以降の単価が書いてあるか。 上限だけあって超えた後の値段が無い見積書は、揉める場所を先送りにしています。ここが書いてあるかどうかで、その相手が過去にどれだけ揉めてきたかが分かる。

三、修正の受付方法が書いてあるか。 口頭で随時なのか、一度にまとめてなのか。まとめて受け取る前提の相手は、一回を大きく使えるので、結果として総額が下がります。

この三つが揃っていれば、金額そのものは多少高くても、最終的に払う額は少なくなります。逆に、三つとも無い安い見積もりは、安いのではなく、まだ値段が決まっていないだけです。

頼む側にもできることがあります。修正を渡すときに、直してほしい箇所ではなく、困っている理由を渡す。 「もう少し左に」ではなく「ここに視線が行かないのが気になる」と伝える。前者は指示なので、その通りに直して終わりますが、直った先で別の違和感が出ます。後者は問題なので、こちらが原因から直せる。往復の回数が変わるのは、たいていここです。

もう一点。一回にまとめて渡す。 思いついた順に小刻みに送ると、こちらは毎回作業を止めて確認し、また戻ることになります。三回に分けて送られた三箇所は、一度に送られた三箇所の倍以上の時間を使います。同じ内容なのに、渡し方だけで金額が動く。相場が立たない理由が、ここにも一つあります。

なお、ここまでは修正が始まってからの話です。そもそも「イメージと違う」が起きる確率は、依頼の前に何を渡したかでほぼ決まります。参考にしたいものを三つに絞る、最終決裁者を先に決める、変えたくないものを一つ書き出す。この三つを済ませてから発注した案件は、修正の回数が実際に少なく終わっています。修正費を下げる最も確実な方法は、値切ることではなく、直す理由をあらかじめ減らしておくことです。

止まる場所を、先に決める

修正費の相場を知りたい、という質問の裏側にあるのは、たいてい「いくらまで膨らむのか分からないのが怖い」という不安です。その不安に答えるのは、平均の数字ではありません。どこで止まるかが、契約の時点で書いてあることです。

うちは修正を回数で売っていません。含める回数を先に書いて、その中で終わるように前を厚くしています。前を厚くすると、後ろが軽くなる。金額は、その設計の結果として出てくるだけです。

相場が無いことは、不透明さの証拠ではありません。止まる場所を書いた見積書だけが、透明になるというだけのことです。平均の数字をいくつ集めても、自分の案件がどこで止まるかは出てきません。

いま検討している見積書に、修正の回数は書いてありますか。書いてある回数を一つ教えていただければ、それが多いのか少ないのかを、こちらの見立てでお伝えします。

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