キービジュアルのサイズは、いちばん小さい一枚から決める
キービジュアルのサイズを考えるとき、多くの人は最大の面から考えます。駅の大きなポスター、サイトの横長の最上部。そこで美しく見えるように、細部まで作り込みます。
けれど、キービジュアルがいちばん多く見られるのは、たいていいちばん小さい面です。スマートフォンの画面の中の、さらに小さな正方形。検索結果の横のサムネイル。そこでは、細部は一つも見えません。
だから、サイズはいちばん小さい一枚から決めます。親指の爪ほどに縮めたときに、何が残るか。人物の輪郭と、光の方向と、一色だけの色。残るのがそれだけなら、大きな面でも、それだけを主役にすればいい。小さな面で崩れない画は、大きな面でも崩れません。逆は、ほとんど成り立ちません。
実際の制作では、横長の16:9、正方形の1:1、縦長の4:5と9:16の四つを、撮影の前に同じ画面の上へ重ねた枠として用意しておくと迷いません。四つの枠が重なる中心に、画の核を置く。そこが、どの面でも切られずに残る場所です。
大きく作ったものは小さくすると消える。小さく作ったものは、大きくしても残る。
強いキービジュアルは、ロゴより先に名乗る
向かいのホームから見るポスターは、ロゴが読めません。それでも、どのブランドの広告かがわかることがあります。名乗っているのは、ロゴではなく画そのものです。
画が名乗るためには、毎シーズン変えないものを一つ持つことです。光の温度なのか、人物が決してこちらを見ないことなのか、画面の三分の二を占める暗さなのか、たった一色の差し色なのか。服も、モデルも、場所も変わります。その中で一つだけ変えないものが、ブランドの署名になります。
キービジュアルは、そのシーズンだけのものではありません。去年の一枚と今年の一枚を並べたとき、同じ署名を持っているか。そこまで揃って初めて、キービジュアルはブランドの資産になります。
署名を一つに絞ると、残りは毎回自由に変えられます。今年は海辺でも、来年は地下の通路でも構わない。一つの署名が守られていれば、場所や服を大きく変えるほど、同じブランドの次の章として読まれます。変えないものを決めることは、変えていいものを増やすことでもあります。
キービジュアルとは、来年も使える「型」のこと
撮影の日に全員が黙った一枚は、モニターの前で完成したように見えます。けれど、キービジュアルとしての仕事はそこから始まります。何十回も切り抜かれ、縮められ、文字を載せられたあとに、まだ同じことを言っているか。
キービジュアルとは何かを一行で言うなら、どこで切られても同じことを言い直せる、画の型のことです。撮る前に、鍵が開ける扉を一つ決め、文字の席を用意し、いちばん小さい一枚に残るものを決める。それができていれば、その型は、来年の撮影の日にもまた使えます。