書体を替えても印象が変わらない。そういう相談をよく受けます。ゴシックを明朝に替え、明朝を細いゴシックに替え、それでも読む気にならない。原因は書体の選択ではなく、文字の置かれ方にあることがほとんどです。
同じ書体でも、一行が長ければ読み飛ばされ、行間が詰まっていれば重く見えます。書体は、選ばれた瞬間ではなく、組まれた状態で印象を決めます。
おすすめのフォント一覧から選ぶと、なぜ決まらないのか
おすすめのフォントを並べた記事を見ながら選ぶと、たいてい選べません。
見本は、大きな文字で表示されています。見出しほどの大きさなら、書体の骨格の違いははっきり出ます。ところが実際に読まれる本文は、その半分以下の大きさです。本文の大きさまで縮めると、良い書体どうしの差はほとんど消えます。
もう一つの理由は、見本には環境が書かれていないことです。その書体が、どの端末で、どの太さで、何行にわたって使われた状態なのか。それが抜けたまま名前だけを持ち込むと、手元では美しく、実機では潰れます。
細い書体はとくに危険です。制作中の画面では上品に見えた細字が、明るい屋外のスマートフォンでは薄く飛びます。上品さは線の細さではなく、余白でつくるものです。
フォントで失敗するとき、選んだ書体が間違っていることは、ほとんどありません。
間違っているのは、その書体に与えた大きさと、一行の長さです。

